あの日

ある日

※うろ覚えの広島弁なのでご了承ください。

現在の人間

 森井 拓海14歳

 友達1 14歳

 友達2 14歳

 友達3 14歳

拓海のお母さん

新聞記者の美樹叔母さん 32歳

過去の人間

  順平(順平)12歳

  久子(久姉)15歳

  菊     11歳

子供たち   

ホリ青

第一章 カメラ

拓海、友達1、2、3、学校帰りに歩きながら話している

友達1「タクー今日ゲーセン行かない?」

拓海 「おう」

友達2「そういえば拓海くんもうすぐ誕生日じゃん、おめでとー」

拓海 「アハハ、まだもうちょい先だよ、それでさぁイニシャルD                           であとすこしで全国ランキングに載りそうなんだよ!」

友達3「マジで!それヤバくない」

拓海 「じゃ、三時にゲーセン前集合な!」

全員 「あいよー」

一度全員とは分かれる前方から美樹叔母さん歩いてくる。

叔母さん「やぁ拓海くん今日もかっこいいね一枚撮らせてよ」

拓海 「叔母さんお久しぶり。今日はどこに取材に行ってき         たの?」

美樹叔母さん「新しくできたそこのパン屋だよ。地域新聞コラムの写真を頼まれてね。ああ、そうだ、渡したいものがあったのよ。はい、ちょっと早いけど君に誕生日プレゼントよ」

拓海「あ、ありがとう。」

箱を開けてみる

拓海「カメラ・・・しかもすごく古い」

美樹叔母さん「小さいときにカメラ欲しいって言ってたじゃない」

拓海「いやでも今はスマホあるし」

美樹叔母さん「スマホのカメラなんか画像荒いし写真撮るって感じしなくて嫌なの。」

拓海「でもなんでこんな古いの」

美樹叔母さん「家の押し入れの奥にあったのよ、捨てるのも勿体ないしね。…」

拓海「なんか気味悪いなぁ。」

美樹叔母さん「でも似合ってるわよ。フィルム入ってるからね。使い方前見せてあげたからわかるでしょ。」

拓海「は、はいありがとうございます。あの・・・なんか美樹叔母さんって毎日楽しそうですね。」

美樹叔母さん「そう¬?だって人生楽しまなきゃ損よ。あなたも楽しんでるじゃない」

拓海「・・・そうですか?」

美樹叔母さん「え?」

拓海「なんか毎日毎日同じことして毎日ぼーっとして自分は何すればいいんだろうとか・・・なんか退屈で」

美樹叔母さん「カメラの面白いところはね、なにかを撮りたい気持ちがあれば普段目の届かない所に目がいきやすくなるの、だから毎日が発見と驚きにみちあふれていてとても刺激的になるの」

拓海「・・・」

美樹叔母さん「なんかいろいろ言っちゃったけどまぁ最初は何も考えずにバシバシ撮ってみなよ」

拓海「でもフィルムカメラって写真撮るたびお金かかるんでしょ」

叔母さん「アー・・・そこは姉さんに頼んで、それじゃあね。」

美樹叔母さん退場

拓海「多分お母さんそんなにお金出してくれないよ・・・だったらそのお金でゲームしたいし」

拓海「刺激かぁ・・・試しに一枚撮ってみようかな」

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転

第二章 刺激

ホリオレンジ

草が敷いてある。

拓海「・・・シャッター切るのって気持ちいいな、ゲーセン行くついでに写真屋寄っていこ」

帰ろうと思いあたりを見渡すがあたり一面畑

拓海「あれ?・・・ここどこだ?すげー田舎みたいだけど」

順平「あれ?そこ誰かおるんかー」

拓海「!?」

菊 「あんちゃんあん人だれ?」

順平「うん?おぬしここのもんじゃないのう」

拓海「あのー・・・ここはどこで」

久子「順平どうしたんかーイナゴとれたんかー」

順平「久姉ーなんか変な服きてる人がおったよー 」

拓海「いや変な服って制服だし、」

久子「ああどうも、すみません、あなたさんもこんなところにいるけぇイナゴとりですか」

拓海「イナゴとり?」

順平「あんちゃんイナゴしらんのか」

拓海「いやイナゴは知ってるけどなんでイナゴなんか」

順平「久姉そっちおったよ!」

久子「よし順平見逃すんじゃないよ、あなたも手伝ってください、とれたら山分けしましょ」

拓海「あの、さっきから人の話遮らないでもらえますかね、」

順平「あんちゃんそっちいった。」

拓海「うわっ」

拓海びっくりして転ぶ、そして久子がすかさずイナゴを捕まえる

順平「久姉捕まえた?」

久子「ばっちりさ、菊、かご貸して。」

菊が持ってきたかごの中に入れる、かごの中を覗き込む

順平「いっぱいとれたのう20匹ぐらいかのう?」

久子「セミも4匹とれたしこんだけあれば十分じゃ」

拓海、腰に手をあてている

拓海「いてて、腰がぁ・・・」

順平「あははは、あんちゃんはどんくさいのう」

拓海「うっ、うるさい!少しびっくりして体勢を崩しただけだ!」

久子「でもほんとにきれいな転び方してましたのう。」

拓海「うぅサロンパスないかなぁ」

菊 「なに、さろんぱすって?」

順平「あんちゃん名前は?」

拓海「森井拓海」

順平「ワシは弟の順平」

久子「一番上の浜崎久子いいます。よろしく、でこっちが妹の菊」

菊「・・・」(軽く会釈)

拓海「おんじゃ軽—くタクって呼んでよ、よろしく。」

順平「よろしくのうタク」

拓海「あとそのイナゴどうすんの」

久子「まぁいろいろありますけい家帰ってから何にするか決めま  すが調味料もなんもないけい、多分串焼きじゃな。」

拓海「ふーん・・・え、食うの!?」

久子、順平、菊「え、食わんの?」

拓海「いやどうやって食べんだよこれ!?」

久子「そのまま焼いたり煎ってすりつぶして食べたり、なんなら

何匹か山分けしましょうか?」

拓海「いやいやいや無理無理無理絶対無理」

順平「まさかタクは食ったことないんか?」

拓海「食うか!」

順平「お前金持ちの坊ちゃんか?」

拓海「いや普通のサラリーマン家庭だわ、

   ここはどんな田舎だよ・・・」

菊 「タク、さっきから気になっとんじゃがそれは何じゃ?」

拓海「これ?ああ古いカメラだよ。」

菊 「かめら?」

拓海「そうだせっかくだし写真撮ろうぜ」

順平「しゃしん?」

拓海「そこに並んで笑顔で、あ、順平もうちょい右よって、よし   じゃあ撮るよーディズニーシーでねー」

久子「でぃずにーしー?」

拓海「俺がディズニーって言ったらシーって言ってね。じゃあ撮るよー、ディズニーーー」

久子、順平、菊「しーーー」

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転

拓海「よーしばっちりだってあれ?、さっきの所に戻ってる・・・

もしかしてこのカメラでシャッターを切ればさっきの所に行けて、

さっきのところでシャッターを切れば戻って来れるってことか?

うおおおおおおおおおおおなんかすげええええええこのカメラ!」

拓海、はしゃぐ

はっとして時間を見ると三時

拓海「あぁ!ヤバい集合時間じゃん!まだ制服のまんまだし!ヤベーーー!!」

花道から久子、順平、菊、カメラで写真撮ったときのポーズ

この間に拓海は私服に着替える

久子「あれ、タクさん?」

順平「久姉ータク消えちゃったよ」

久子「一体どこに?なんか不思議な人じゃ」

菊「お化けかなんかかのう」

順平「おっおばけ?そんなん気味悪いのうやめてくれ」

久子「でも悪い事する感じなさそうじゃし」

順平「じゃあお化けタクじゃな」

菊「お化けタク・・・」

久子「まぁまたひょっこり現れるかもしれけえ

そのときは仲良くしてあげてな菊」

順平「菊は人見知りけえの」

久子「あんたは迷惑かちゃいかんよ。このガキ大将め」

久子、手刀で頭たたく

順平「いててて」

久子「さっ、はよ戻るよ」

順平「はーい」

花道暗転

舞台には友達1、2、3、が不機嫌そうに待ってる

拓海「遅れてごめーん」拓海走って登場

友達1「おいタク、一時間遅刻だぜ」

友達2「LINE何通も送ったよー」

拓海「ごめんいやーちょっとヤバいもんもらってさーこのカメラ。」

友達3「え、何この古いカメラ?つーかスマホでよくない?」

拓海 「いやこのカメラなんつーか超能力的ななんかでシャッター切るといつの間にか変な所に飛ばされるみたいでさー」

友達1「は?お前どうしたし、廚二病か?」

友達2「なんのアニメのやつそれ?」

拓海「いやほんとなんだってそれが」

友達1「え、ガチの廚二秒かよ」

友達3「斉木楠雄のψ難でそんな奴いなかったけ?」

友達1「俺の名は漆黒の翼」かっこつけて言う

友達2「案外似てるーー」

友達3「ねぇゲーセンついでにドンキーホーテよりたいから早く行こー」

友達1「タク廚二病爆発ンゴwwって打っといた。」

拓海 「え、まさか、それグループLINEに出してねぇよな」

友達1「さーてどうすっかなー」

友達1、2、3、退場

拓海「あ、ちょ、まってー」

暗転

第三章  夢

拓海先ほどの私服の上にパーカーをつけて首からカメラをさげている

拓海「はぁ、部活疲れたー、よし、土曜日の午後1時、時間にジャマされる事もないし思う存分田舎を楽しむか、・・・結局みんなも誘ったけど信じてくれなかったな、よしここでシャッターを切れば」

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転

順平が竹棒を振り回してるスローモーションになり拓海がぎりぎりで竹棒をよける

順平「あ、おばけタクじゃん。」

拓海「あ、おばけタクじゃん。じゃねぇ!あぶねぇな!」

順平「だって突然現れるけえ仕方ないのう」

拓海「竹の棒なんか振り回して、ケンカでもするのか」

順平「おう、次こそボコボコにしたるけえ」

拓海「えぇ元気だなぁ・・・」

順平「そりゃワイはかっこいい軍人さんになりたいけえ体強くしてけんかもいっぱい勝てるようにせんと」

拓海「そっか自衛隊かーちゃんと夢があるっていいなー」

順平「じえいたい?なんじゃそれ?それよりタクはなんか夢あるんか?タクも軍人さんになりたいんか?」

拓海「おれは・・・なにも無いかな」

順平「何にも無いんか?」

拓海「この時期から将来の夢持ってるやつほとんどいねぇよ」

久子「順平ーおるー」

順平「おるよー」

久子、菊またイナゴをとってる

久子「もう順平ははすぐ消えちゃうんだから・・・ああ、どうもタクさん。」

拓海「ちわっす、きょうもイナゴとりですか」

久子「ほとんど食料がないけえね、順平、なんか迷惑かけてないだろうね」

順平サッと竹棒を隠す。

順平「いやワシは何にも迷惑かけとらんよなぁタク。」

拓海「お、おう」

菊「あ、足擦りむいとる」

久子「じゅんぺーーい?」

順平「ワシは何も知らんよ!」

拓海「いてて、けっこう傷が深いな。」

菊 「この薬草すり潰して出た汁を塗れば痛み止めになるけぇ・・・」

拓海「ああ、ありがとう、よくそんな事知ってるね。」

菊 「近くの家のおばちゃんに習ったんじゃ」

久子「で、何の話しとったの」

順平「将来何になるかって話じゃ」

拓海「久姉さんは?」

久子「わたしは・・・実は前から踊りがしたいって思っとたんよ

前に友達から借りた雑誌にのってた踊り子の人たちがとてもきれいじゃったのが忘れられんくて」

菊 「久姉は綺麗じゃけいきっときれいな踊り子さんになるよ。」

順平「菊は?」

菊 「私は・・・医者さんになりたい、傷付いてるすべての人を助けたい。」

拓海「きっといい医者になるよ、さっきの薬草のおかげでもう痛くなくなった。ありがとう。」

菊 「えへへ」

順平「菊!それワイにもくれ!この後河川敷で決戦なんじゃ」

久子「またケンカかい!?また傷だらけで泣きべそかいて帰って くるのは嫌だよ!」

子供たちがどたどたとタクたちの後ろを走ってく

子供たち「じゅんぺー時間じゃぞー!」

順平「おう!いま行くけい」

久子「あ、コラーーーイナゴとるの手伝えーーー」

順平「嫌だねーー」

久子「まったく」

拓海、腕時計を見る

拓海「もうそろそろ塾の時間だ、それじゃあね菊ちゃんありがとう」

菊 「うん!また来てね」

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転

拓海にピンスポ

拓海「・・・なんでだろう、虫を食べるほど貧乏なのになんで

あの人たちは希望にあふれてるのかがわかった・・・

夢があるんだ、夢ってあんなに人を動かすものなんだそれに比べて俺は・・・俺は何をしてるんだ毎日毎日退屈にだらだら過ごしてるだけじゃないか、俺、このままでいいのか?そんなもやもやでおれはイライラしていた」

花道に机とお母さん朝食食べてる

母親「今日は朝からどこに行くの?お昼から家族みんな集まって誕生日会なのよ」

拓海「写真を撮りに。」

母親「拓海ももうそろそろ遊んでばっかりいないで目標を決めて勉強しなさい成績悪いんだから。」

拓海「勉強はしっかりやってるよ。」

母親「じゃあこの間のテスト何点だったか見せなさい」

拓海「うるさいうるさいうるさい!」

母親「なにようるさいってそれが母親に対する態度ですか?」

机をたたく

拓海「黙れ!」

母親はボーゼンとしている。拓海は怒ってカメラと学校のバックを持って家を出て行く

拓海は舞台へ、

拓海「間違えて学校のバック持ってきちゃった・・・クソッ・・・よし、田舎の綺麗な空気を吸えば少しはこのイライラが収まるかな・・・」

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転途中フラッシュが炊かれる

拓海「なんだ?このカメラフラッシュなんてあるっけ、ってえ、」

あたり一面焼け野原 奥からはゾンビのような人たちが歩いてくる

拓海「なんだよ、これ・・・」

子供たち「みずを・・・みずを」

久子「タクさん!!」

拓海「久姉さん!どうしたんですか!順平は!?菊ちゃんは!?」

久子「わからない・・・突然ピカッと光が走ってそしたら・・・

外におった私は塀が倒れてきたおかげで無事だったけど家が崩れて・・・菊は即死で、順平は・・・助けたんだけど血が・・・止まらなくて、」

順平「タク・・・」

拓海「順平!!しっかりしろ」

久子「順平!!」

拓海「救急車呼ぶんだ!まだ助かるかも、」

電話をかけるがかからない

拓海「どうして?ここは一体どこなんだ?」

順平「タク・・・久姉・・・いままで・・・ありがと・・・う」

久子「順平!?じゅんぺい!!いやああああああああああ」

拓海「どうして順平なんだ・・・どうしておれじゃなくて順平が死ぬんだよ!!」

久子「いや・・・順平・・・菊・・・わたしを・・・置いてかないで」

拓海「どうして順平が・・・俺は生きる価値なんて無いのに

なんで順平が死んで俺が生きてるんだよ」

久子「タクさん・・・それは違います。生きる価値がないなんて言わんといてください。あなたは生きるために生まれてきたんです。そこに価値なんて求めないでください。」

拓海「久姉さん・・・」

久子「タクさん・・・ひとつだけお願いがあります・・・そのかめらというのはものすごく綺麗な絵を作れるけえ聞きました。」

前に作ったしゃしんていうのを一枚いただけませんか?死んだ人は忘れたら本当に死んでしまうんじゃけい、忘れたくはないんじゃ。」

拓海「わかりました。」

バックから現像してきた写真を渡す。

久子「すごい・・・そっくりじゃ・・・これでもう一生わすれんよ・・・順平・・・菊・・・」

拓海「・・・僕も家族が心配なので戻ります。」

久子「ありがとうタクさん。」  

フィルムを巻き上げ、シャッターを切る。シャッター音と同時に暗転

拓海現代に戻ってくる。

しばらく呆然と立ちすくむ、

拓海「まさかあの光は・・・もしかして・・・」

ハッとバックの中の歴史の教科書をとりだし座り込んで

第二時世界大戦のページを開く

拓海「八月六日午前八時十五分広島に原子力爆弾が投下され数万人の死者が出た,・・・あれは過去の世界だったんだ・・・僕は・・・タイムスリップをしていたんだ・・・どうしてそんな簡単な事にも気付けなかったんだ・・・みんなにこの事伝えていればちゃんも、順平も・・・菊ちゃんも逃げられたのに」

後ろから拓海囲むように死んだ人たち登場

順平 「ある日は唐突にやってくる。」

菊  「伏線など張る暇もなく。」

 エキストラ  「説得力のある破壊なんてあるものか。」

   「死とはいつも理不尽にやってくる・・・」

  拓海を除く全員 「今日、いままさにこの瞬間にも

ある日はやってくるかもしれない」

拓海 「病気、災害、事故、いつ人が死ぬなんて誰にもわからない、そんな世界で俺は今日も生きている。おれは生きているんだ。だから毎日は大切なんだ・・・」

拓海、母に電話を掛ける

拓海「もしもし母さん?さっきはあんなひどいこと言ってごめん

今帰るよ・・・うん、わかった。

あと一つだけいい?あのさ、いつもありがっ」

閃光が走り暗転、拓海は倒れる。そのまま閉幕。