運命(さだめ)

題名「 運命(さだめ) 」

         作:鶴岡 美香・向井 優菜

登場人物

3年B組 クラスメイト

 ・今井 麗奈

 ・松田 颯汰

 ・永倉 菜津紀

 ・成瀬 悠亜

 ・中原 和花

 ・渡辺 寝一

 ・高宮 咲愛

 ・飯田 小太郎

 ・林     … 先生

 ・木下 陽太 … 颯汰の友達

 ・今井 董  … お母さん

 ・今井 稜平 … 麗奈の兄

 ・子ども   … 小学五年生。女の子。

麗奈の家。現在。

麗奈「ただいまー」

母 「おかえりー」

麗奈「今日ね、男の子に告白しちゃったんだー!」

母 「え?誰?」

麗奈「え、誰っていつも話してる……」

教室。過去。

中割幕開く。(中に教室のセット)

がやがやと騒がしい。先生登場。

林 「ごめん、会議が長引いて……よし、みんな座って~。今日から3年B組の担任になりました、林です。じゃあ、軽く自己紹介します。私はさっき言った通り林です。あ、下の名前は みお です。好きな食べ物は梨ジュースと納豆です。嫌いな食べ物は特にないけど、しいていえばトマトかな。じゃあ先生の自己紹介はこれくらいにして、みんなにも自己紹介をしてもらいましょう。じゃあ男子の一番から」

舞台暗転。成瀬にピンスポ。他の生徒は口パクで

反応している。

成瀬「ちーっす!俺、この学校いや、世界一、いや宇宙一イケメンの成瀬悠亜。俺の彼女になりたい人はあとでろうかまで!あーでも大人数でこられても困るから手紙で!誕生日は五月十九日。誕生日プレゼントは鏡とか櫛がいいなー。でも俺そんなの好きじゃないから。別に……(チャイム音)」

明転。

先生「あ、終わっちゃったか。ありがとう、成瀬くん。じゃあ残っちゃった8人はみんなで話して軽く自己紹介しておいてね。じゃあこれで始業式のホームルームを終わりにします。」

颯汰「起立、礼、さようなら」

永倉「あーやっと終わった!!ダリ―……おい、ありさ!!(そでにはける)」

中原「(高宮に)ねーねー、新しい生徒会長イケメンらしいよー」

高宮「まじで!どこにいるかなー。行こ行こ!!」

今井「ねぇねぇ……」

中原「(今井をちらっと見る)え、まーいーや。行こう!!」

高宮「あ、うん」

高宮と中原、笑いながらはける。

颯汰「じゃあ、帰るか!!みんなで帰ろうぜ!!」

男子が全員立ち上がり、颯汰の所へ集まり、教室

を出ていく。麗奈は1人教室に残っている。

颯汰「おい!今井も一緒に行こうぜ!」

麗奈「(驚いて)え?」

飯田「早く帰りましょう」

麗奈「えっ……でも……」

颯汰が手を引いてはける(3幕)

颯汰「ほら」

1幕から四人で出てくる。

最初男子だけで話している。今井は1人で後ろか

らついていく。

颯汰「お前って1・2年生のころB組だった…今井だよな?」

麗奈「えっ……うん。松田君はA組だったよね。」

颯汰「そうだけど、なんで知ってんの?」

麗奈「そりゃ知ってるよ。だって松田君有名だったもの。」

颯汰「有名?」

麗奈「うん、みんな『A組の松田くんカッコいい!』って話してたよ」

颯汰「へぇ~」

成瀬「俺も……」

麗奈「(さえぎって)有名だったの?」

飯田「成瀬君は、クラスで一番『フラれた人』ってことで有名でしたよね」

成瀬「(テンパる)そ、そういえばお前たち何部だっけ?」

颯汰「俺は陸上部だよ」

麗奈「へー、そうなんだ!私は合唱部だよ」

颯汰「合唱部か。今井らしいな。あ、俺こっちだ」

麗奈「私もこっちー」

成瀬「じゃあ俺たちあっちだから。」

「じゃあね」など言って別れる。

教室のシーン

颯汰・成瀬・飯田が教室に入ってくる。後ろから

麗奈が登場。

麗奈「おはよ~」

成瀬「お・は・よ・う今井さん。今日も可愛いね(客席も含め他の人にも言う)」

麗奈「あ、ありがとう」

飯田「彼のことは気にしなくていいです。いつも通りなんで」

麗奈「(笑う)ありがとう。」

四人で話している。女子がくる。「何あれー?」等

と話す。

麗奈「(中原と高宮に)おはよう」

中原・高宮無視をする。笑う。

颯汰「おい、今井―。今日も一緒に帰ろうぜ」

麗奈「う、うん!いいの?」

飯田「もちろんですよ」

成瀬「仲良くなれそうだな。またファンが増えちゃうよ」

寝一「おはよーはやく宿題やらなきゃ…(寝る)」

飯田「今日の宿題は自己紹介カードを書く。ということですね」

寝一「(寝言で)うん、そうだね」

颯汰「あ、なんだ寝一起きてたのかよ」

寝一「…」

飯田「寝一くん寝ていますよ」

颯汰「え?あ、本当だ」

成瀬「寝言だね。この俺様の夢見ているのか?!」

麗奈「そうかもね。あ、もう時間かも。座ろう」

それぞれの席に着く。麗奈が席につくときに中原が向かってきてわざとぶつかる。

中原「ごっめーん。気付かなかった~」

高宮と顔を見合わせて笑う。

林 「みんあ席についてください。じゃあ挨拶をしましょう。起立、気を付け、礼。」

全員「おはようございます」

林 「昨日の宿題を提出してください」

それぞれ何か言って出す。

林 「みなさん仲良くなれましたか?今日はオリエンテーションです。新一年生と仲良くなりましょう。よし、移動―!!」

全員移動する。麗奈だけ教室に残る。

麗奈「(こっそり机の中に手紙を入れる)よし」

永倉来る。

永倉「あれ?みんなは?」

麗奈「あ、一年生と一緒にオリエンテーションだって。多分校庭だと思う。」

永倉「あざす」

オリエンテーション?

颯汰「あ、おーい、今井!」

麗奈「あ、松田くん」

颯汰「あれ?一年生は?」

麗奈「なんかみんな勝手にどっか行っちゃって」

颯汰「俺もー!あそこ座ろう」

麗奈「あのさぁ」

颯汰「ん?」

颯汰「松田君って好きな人とかいるの?」

颯汰「え?!好きな人?!」

麗奈「う、うん。」

颯汰「まだクラス替えして2日しか経ってないからあんまりわかんないけど好きなタイプは…」

麗奈「うん!」

颯汰「手芸が好きでー」

麗奈「うん!うん!!」

颯汰「料理が上手で!」

麗奈「おー!うん、それでそれで?」

颯汰「明るい子かな!」

麗奈「…」

颯汰「あ、今井は?」

麗奈「え、私は特にないかな。そろそろ教室戻るね」

走ってはける。

暗転。チャイム。

林 「これで帰りの会を終わりにします。起立、気を付け、礼」

全員「さようなら」

高宮「ねーねー。(寝一をみる)」

中原「(笑って)軽く起こしておく?」

高宮「そうだな。」

中原・高宮「「おーい、朝ですよー!!(笑う)」」

中原「起きねーか」

高宮「まーいーや。帰ろ。」

二人はける。

寝一「(舌打ち)うっせーな、起きてるよ!!」

だるそうにしてはける。

颯汰「(机の中を見て)?授業終わったら少し残ってください。話したいことがあります。今井より――ってなんだろう」

成瀬「おい、帰るぞ~」

颯汰「あ、わりい。先帰っててー後で追いつくー」

成瀬「OK!早くしろよ!早くしないとこの俺様が……」

木下「何言ってんだよ、早くこい!!(颯汰に)おい、お前もはやく来いよ!」

教室には颯汰と麗奈のみ。

颯汰「話って何?」

麗奈「え?話って?」

颯汰「え?って何だよ。この手紙お前が書いたんだよな?記憶喪失か?」

麗奈「あー手紙ってそれのことね。ごめんごめん。もちろん覚えてるって。『記憶喪失』って。松田君、意外と面白いね。」

颯汰「そう?まあいいや。それでこれのこと」

麗奈「あ、本題ね。ごめんごめん。松田君っていいとこたっくさんあるよね。」

颯汰「え、何?急に……」

麗奈「ほら、これ見て!(プロフィール表を出す)もし百万円あたったら世界の人々を助けたいです。どっからどう見てもいい人っぽい!(ナレーション風に)運命のときがやってきました。私は机に手紙を入れるか昨日の夜寝ながらずっと考えていたけど…ついに今日机に手紙を入れるって決めて、さっき入れたの」

明かりがつく。

麗奈「(我に返る)あ、ごめん。ついつい緊張しちゃって。」

颯汰「あ、そっか。別にそれならよかった」

麗奈「ごめんね。自分のことばっかりしゃべって。」

颯汰「ううん、別にいいよ。……あ、そうそう、この手紙入れるのに寝ながら考えたって本当?」

麗奈「うん。だって変人って思われても困るしね」

颯汰「そっか…。この手紙、どうゆうこと?」

麗奈「私……私!松田君のこと!す、すすすすす」

颯汰「え、何?するめ?」

麗奈「あ、ごめん。す、スリムでいいよねーって思って。」

颯汰「(笑う)ありがとう」

麗奈「(自分に)よし、おちつけ、おちつけ。松田くん!私ね、松田君とつ、つつ、つ、つつ、つり!行きたいなぁって思って!」

颯汰「あ、つ、つ、つり?!別にいいけど、あ、用事ってそれだけなのかな?じゃあ帰ろう!」

麗奈「あ、うん。ごめん、ちょっと先に行ってて」

颯汰「あ、おう。」

颯汰はける。

麗奈「はぁ…」

帰ろうとすると中原と高宮がくる。

中原「あれぇ~?何か二人で話しているなーって思ったら、釣りのお誘いですかぁ~」

高宮「まさか、告ろうとしていたとか…?なわけないか!」

中原と高宮が笑い、麗奈は走ってその場から逃げ

る。

颯汰「今井、まだかな」

走って麗奈が出てくる。

麗奈「ごめんごめん、おまたせー」

飯田「遅いですよ」

麗奈「ごめん。だって松田君たちすっごい遠くまで行っちゃうんだもん。」

颯汰「そうかな」

成瀬「まあそんなこといいから早く帰りましょう。俺は帰ってポージングの練習をしなくちゃいけないんだから。」

颯汰「ポージング?」

麗奈「成瀬君、モデルだったの?!」

成瀬「モデルまではいかないけど、自分を磨くために毎日練習しているのだ!!世界一カッコいい男になるためにね!」

みんな「(笑う)」

颯汰「じゃあそろそろだな」

飯田「そうですね」

麗奈「うん!また明日!!」

暗転。(チャイム音)

林 「はい!起立!気を付け!礼、よろしくお願いします!!」

永倉「先生、今日なんかテンション高くないっすか?てか、みんな変わった?1日で、渡辺もちゃんと起きているし、成瀬もおとなしい。永倉、私もちゃんと来てる。なんかあった?」

寝一「なんもねーよ」

林 「はいはい!先生のテンションが高いのは……昨日プロポーズされちゃいました!」

颯汰「え?それまじですか?」

成瀬「ちょっと遅めのエイプリールフールじゃないんでうか~?」

林 「何を言うんですか!成瀬君!!」

永倉「やっぱ変わってないわ。先生、だるいんで保健室いってきまーす。」

永倉はける。

寝一「何も変わってねーじゃん(寝る)」

林 「よし。今日は短縮日課です。日課間違えないように!これで朝の会を終わります。気を付け。礼、ありがとうございました。」

がやがやしている。林がダッシュで戻ってくる。

林 「今井さん?今すぐ荷物をまとめて昇降口まで来てください。」

麗奈「え?あ、はい。」

高宮「なんだろうね(中原に)」

中原「よくわかんないけどなんだろう」

3幕にはける。

林 「もしもし、はい、わかりました。今すぐ行きます(電話)」

麗奈が1幕から入ってくる。

林 「あ、やっときた。」

麗奈「え?何?……」

林 「驚かないでね。覚悟して聞いてね。」

麗奈「え?」

林 「今井さんのお母さん、事故に合って……」

病院。

音響、ドアを開ける音。

麗奈「お母さん!!(かけより泣く)ねえ、起きて、お母さん!!死んじゃいや!!」

稜平「れな!母さんは!!」

麗奈「(泣く)」

稜平「(かけよる)母さん!おい、母さん!!嘘だろう……」

麗奈「お母さん!なんでよ!なんでお母さんみたいな優しい人がこんなになっちゃうの?もっと悪い事した人が死ねばいいのに!」

稜平「れな!それは違うだろう。それに母さんが死んだってなんで決めつけるんだよ。まだ死人だって決まったわけじゃないし。」

麗奈「(うなずく)」

稜平「ちょっと先生の話聞いてくる。」

麗奈「お母さん、頑張って!私お母さんが元気になるまでずっとそばにいるから。」

看護師「(ノック)むすめさんですか?」

麗奈「あ、はい。」

看護師「先ほど精密検査の結果がでて、お母さん、目をさますかわかりません。との結果でした。失礼します。(はける)。」

放送「面会にいらっしゃっている方々へご連絡です。面会時間が過ぎましたので やかにご退室をお願いします。」

ピンとサスが消えて暗転。

前側だけライト。後ろでベッドから机に変える。

舞台は家。颯汰たちドアの外で口パク。

料理をしている麗奈。味見をする。

麗奈「うわ、マズ!!はあ、お母さんって大変だ」

稜平「なあ……母さんさぁ」

麗奈「(さえぎるように)なに?!」

稜平「え……いや……」

麗奈「ていうかさ、なんであの時お母さんを一人で買い物に行かせたの?」

稜平「なんで知っているの?!」

麗奈「先生から聞いた」

稜平「それのことなんだけど……」

麗奈「ねえ、なんで?あの時りゅう兄が止めてくれればお母さんが助かったかもしれないでしょ!」

稜平「今更そんなこと言うなよ」

麗奈「それは私だってわかっているけど!(泣く)」

稜平「(頭ポンポン)悪い、オレ頭冷やしてくるわ」

ドアを開けたら颯汰たちがいる。

稜平「え?」

颯汰「え?」

成瀬「え、あ、あの、今井さんの……」

稜平「あ、れなの友達?奥にいるから入ってー」

颯汰「あ、ありがとうございます。お邪魔します。」

飯田「お邪魔します」

颯汰「(泣いている今井をみつけて)おい、見ろ。どうする?話しかけるべきか?」

飯田「こういう場合は話しかけずそっとしておくのがベストってこの本に書いてあるけど。」

成瀬「せっかく来たんだし、帰るわけにはいかないだろう。」

颯汰「それはそうだけど」

麗奈「ん?」

男子がそれぞれ麗奈に気付かずしゃべっている。

飯田「あ、今井さん気づきましたよ」

颯汰「え?あ、あ、のぞこうとかそういうのじゃないから安心して!ちゃんとさっきいた人にも許可とったし。」

成瀬「あ、そうだ。思い出した!さっき出ていった人って彼氏?」

颯汰「(頭叩く)何今聞いてんだよ!空気読めよ!」

成瀬「いってー!でも気になるじゃん!」

颯汰と成瀬、言い合いになる。

麗奈「彼氏じゃないよ」

颯汰&成瀬「「え?」」

麗奈「彼氏じゃないよ、さっきの人。だいたい年でどれくらいかわかるでしょ。私たちけっこう年は離れてるし。」

成瀬「え?何歳?」

颯汰「ちっ、だから!」

麗奈「十歳差。りゅう兄は二十二歳だよ。あ、立ってたら疲れるよね。座って。」

飯田「あ、ありがとうございます」

麗奈「今お茶だすからちょっと待ってて。」

颯汰「あ、いいよ。別に。今はゆっくり休んでて。」

麗奈「ありがと。」

颯汰「お母さん、大丈夫か?」

麗奈「全然だめ。先生には目を覚ますかわかんないっていわれた(泣く)」

颯汰「そっか……わりい。俺と今井、二人にしてくれるか?」

飯田「え、あ、はい。わかりました。」

成瀬「楽しんでね」

二人になる。

颯汰「お母さん、そんな状態なんだ」

麗奈「うん」

颯汰「あ、俺でよかったら悩み聞いてあげることができるけど」

麗奈「ありがとう。あのさ、さっきはごめんね。なんかお兄ちゃんと喧嘩してるとこ見られてはずかしい。」

颯汰「全然大丈夫だよ。なんでも話していいよ。無理しなくてもいいけど。今の気持ちが少し軽くなるかもよ。」

麗奈「うん。…。私ね、お母さんが事故に合ったって聞いたときね、目の前が真っ黒になって、この世界が終わったような感じがしたの。」

颯汰「後悔したってこと?」

麗奈「(うなずく)うん。今までっていうか、最近あんまりしゃべってなかったから。」

颯汰「そっか」

麗奈「私、これでお母さんが死んじゃったら一人になっちゃうのかな」

颯汰「お兄ちゃんは?」

麗奈「りょう兄は多分もうすぐ北海道に戻るんだと思う。なんか最近いいこと一つもないな。」

颯汰「いろいろ大変なんだね。気晴らしにでもさ、約一週間ぶりに学校行ってみない?」

麗奈「ちょっと考えてみる。気持ちおちつくまで時間かかるかもしれないし。」

ドアの開く音。

麗奈「あ、りょう兄帰ってきたかも。」

颯汰「じゃあ今日はおれらはもう帰るよ。クラスメイトの人たちも今井がくること望んでいるからね。」

麗奈「うん、今日は来てくれてありがとう。」

颯汰「全然だいじょうぶ。今井の顔を見られてよかったよ。じゃあな。」

ドアを開ける。

飯田 「お邪魔しました」

稜平帰ってくる。

稜平「ただいま」

麗奈「お帰り。……さっきはごめんね。私来週から学校に行ってみようかなぁ」

稜平「ほんとうに?お前がもう大丈夫っていうならいいけど……まさか!あの男に脅された?」

麗奈「そ、そんなことないよ!松田君はとってもよい友達だし!」

稜平「そっか。ならよかった。学校に行くか行かないかはれな自分自身で決めな。」

麗奈「うん、ありがとう。じゃあもう遅いし、寝るね。おやすみ」

稜平「うん、お休み」

暗転。後ろの明かりがつく。

舞台は学校。チャイム音。

林 「よし、掃除も終わって教室がきれいになりましたね。じゃあ帰りの準備をしましょう。」

先生につれられ麗奈が来る。

麗奈「こんにちは」

林 「あ今井さん、こんにちは。もう帰りの会だけど今井さんの顔が見られてよかったわ。じゃあみんなは帰りの準備していて」

がやがや。

林 「よし、みんな座って。帰りの会を始めます。気を付け、礼。今日は今井さんが復活してまたもとおの生活に戻れます。(颯汰、麗奈の方をみてにっこり笑う)明日からもみなさんで頑張ってこのクラスを楽しくしていきましょう!」

颯汰「起立、気を付け、礼」

全員「さようなら」

中原「今井さんのお母さん死にそうなんだって?かわいそ~」

麗奈「…」

颯汰「違う、今井のお母さんはまだ死んでねぇよ」

高宮「え?なんで守った?」

中原「まさか好きとか?」

颯汰「ち、ちげーよ!うっせーな」

冷やかす。次第にエスカレートし、喧嘩になる。

麗奈「もういいよ!もういいってば!!」

麗奈「あ、ごめん。なんかみんな私のためにありがとう。中原さん。私のお母さんは松田君の言った通りまだ死んでないから。私ね、病院の先生から「目を覚ますかわかりません」って言われた時すっごい後悔したんだ。もっと話したり、お手伝いすればよかったって。でも昨日松田くんたちが家に来てくれて、いつまでもその後悔のままじゃだめだなって思ったよ。だからその後悔を希望に変えようって。だから私は松田君たちにすっごく感謝しているよ。ありがとう。」

教室静まる。

麗奈「あ、なんかみんなひきとめちゃってごめん。じゃあ帰ろう。」

颯汰「そうだな」

暗転。麗奈が出てくる。

麗奈「そして2か月後、私たちは卒業式。3年間勉強した学校とももうお別れって思うととってもさみしいな。お母さんは卒業式の一週間前まで目を覚まさなかったんだ。でも卒業式の前日お母さんの病院にいつも通り花をかえに行くとお母さんが目を覚ましたんだ」

中割幕あく。

麗奈「お母さんーただいまー(花をかえる)今日はね、バラだよー」

母 「(ゆっくりと目を開ける)麗奈?」

麗奈「お母さん?よかった、よかった、お母さん(うれし泣き)」

母 「麗奈。心配かけてごめんね」

麗奈「お母さんが元気になったんだから全然大丈夫だよ!私ね、お母さんが死んじゃうって思うとなんか後悔しちゃったんだ」

母 「なんで?」

麗奈「なんでって、最近あんまりしゃべってなかったしさ、まあ最近って言っても半年前だけどね。」

母 「後悔なんてしなくていいよ、お母さんは麗奈がいるだけで幸せだからね。」

麗奈「そうだ!明日卒業式なんだよね。」

母 「もう卒業式?はやいなー」

麗奈「でも来れないよね。」

母 「そうだね。今日目を覚ましたから、一週間くらいはかかるって先生が」

麗奈「そっか。だよね!でも大丈夫!!」

母 「ごめんね。今日来てくれてありがとうね。じゃあもう遅いから帰ってゆっくり休んで」

麗奈「うん!わかった、バイバイ!おやすみー!」

母 「うん、おやすみ」

中割幕閉まる。

麗奈「その日私は決心したんだ!明日松田くんにもう一度告ってみよ!って。そして私は卒業式の後に松田くんを呼び出して告った。」

体育館裏。

麗奈「あの、二回目になるけど私、松田君のことが…」

颯汰「あ、ちょっと待って」

麗奈「え?」

颯汰「俺は今井…麗奈さんのことが好きです。よかったら付き合ってください。」

麗奈「え?本当に??え、あ、お願いします」

颯汰が麗奈に抱き着く。

麗奈「え?」

颯汰「(ゆっくり麗奈を離す)こないだ今井ん家に行ってお前がどれだけお母さん思いなのかとか、よくわかった。お前のことよくわかんないけど気付いたら好きになってたんだよね」

麗奈「(うれし泣き)ありがとう」

颯汰「じゃあ帰るか」

麗奈「うん!」

手をつないではける。

暗転。空には星が光っている。

颯汰「あ、そういえばさ、お母さんどう?」

麗奈「お母さんね!ちょうど昨日目覚ましてね!でも退院できるのは一週間くらいかかるって。」

颯汰「よかったねー!」

麗奈「うん!」

颯汰「あのさ、俺たちって一生一緒にいられるかな?」

麗奈「なんで?」

颯汰「いや、俺いままで好きになってきた人の中で本気で付き合いたいと思ったの初めてかも」

麗奈「ほんとに?そんなこと言ってもらえるってうれしいな。ありがとう」

颯汰「俺、ずっとずっと今井のこと好きだから!」

麗奈「私も!」

笑いながらはける。

麗奈「そうして、私たちは高校も大学も大人になってからもずっと一緒にいました。何回けんかしたことか、何度ぶつかったことか。全然覚えていないけど、今でも颯汰は私の大切な大切な宝物です。」

中割幕ひらく。未来の麗奈と颯汰の家のリビング。

麗奈「颯汰、今日は早く帰ってきてね!菜々のお誕生日会だから!」

颯汰「もちろん。今日は早く帰れそうだしな」

菜々「おはよー」

颯汰「お、菜々おはよう」

菜々「おはよう」

麗奈「菜々時間大丈夫?あと10分で八時だけど」

菜々「え?!部屋の時計まだ七時半だったよ!これがズレてるんじゃない?(スマホ確認する)あーやばいやばい、もう八時になっちゃうよ!」

麗奈「あと10分あれば大丈夫じゃない?」

颯汰「じゃあ俺行ってくるから」

麗奈「いってらっしゃい」

颯汰「いってきます」

菜々「なあお母さん、何か食べるものない?」

麗奈「あーパン焼く?」

菜々「だからそんな時間ないの!でも何か食べないと死にそうなの!!あーもう、クッキーでいいや!いってきまーす!」

麗奈「いってらっしゃい!気を付けるんだよ!」

暗転。

ハッピーバースデーを歌う。

颯汰・麗奈「「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディア菜―々―ハッピーバースデートゥーユー!!おめでとう!!」

クラッカーを鳴らす。

菜々「ありがとう!」

颯汰「はい。これ、お母さんとお父さんからのプレゼントだ。」

菜々「わぁーすごい!ありがとう!あけてもいい?」

麗奈「いいよ」

菜々「あ!これ私が欲しかったやつ!」

颯汰「喜んでもらえてよかったな!」

麗奈「うん!」

菜々「あ、そうそう。お父さんとお母さんってなんで結婚したの?」

麗奈「なんで?」

菜々「うーん…なんかわかんないけど急にきになっちゃって」

颯汰「ふーん。まあ誕生日だし、少しくらい話してもいいんじゃない?」

麗奈「そうだね、お父さんとお母さんはね……」

                    幕。