フラレガイボーイ

長谷川裕貴…後悔を抱えた男子高校生。みんなから好かれている存在。

宇野あかり…みんなに優しくできるが、自分の感情を出すのは苦手。

西園寺隆 …謎多き転入生。カリスマ性がありあまっている。

宇佐美芽衣…あかりの親友。裕貴と想と同中。

鶴崎 想 …裕貴の友達。クラス一の秀才。眼鏡。

遠山 千紘…昔からキラキラしたものが好き。人になつきやすい。

鈴木 リサ…ギャル。浩一の彼女。一見ばかそうだが成績上位者。

安田 晃一…リサの彼氏。一見ばかそうに見えて自覚のあるバカ。

三左衛間孝…学校の校長。

紅眼鏡 優…裕貴たちの担任。

真ん中に裕貴の親友。紙が長く顔がよくみえない。それが原因でいじめられている。親友を囲むようにしてクラスメイトが立っている。(「あいつキモイよな」「学校来るなよ」)ざわざわ。裕貴が心配そうに見ている。

裕貴「りゅ…」

親友が裕貴の方を見る。

生徒1「おい、裕貴!そんなことしてねーで、はやく行くぞ!」

裕貴「……うん」

親友がまたうつむく。親友以外はける。親友の母の声。

母(声)「荷物もう詰め終わった?ほら、はやく行くわよ!」

親友、うなずいてはける。裕貴登場。電話をかけている。

裕貴「あ、もしもし?」

電話「おかけになった電話番号は現在使われておりません」

裕貴電話を落とす。暗転。

舞台中央に校長。

校長「えー、いよいよ今日から新学期ですねー。えー…(長話・アドリブ)」

段々暗くなり、暗転。場転して教室のシーン。

リサ「まぢ校長話長すぎぃ」

晃一「それな~。校長絶対ヅラだよな。」

リサ「いやもうあれは見せにかかってるよね」

あかり「はぁ~疲れた」

芽衣「ね、長かったよね~」

先生「はい、みんな席についてー」

裕貴「気を付け、礼。」

みんな「おはようございます」

先生「今日は皆さんにお知らせがあります。知ってると思いますが、転入生がいます。」

晃一「お~!」

先生「入ってきてください」

西園寺「……」

先生「あれ?西園寺君?」

ミラーボールがつく。西園寺は客席でポージングをとっている。客席の人に「今

日はぼくのために来てくれてありがとう」「君、とってもかっこいいね。僕の次

に」など言っている。壇上に上がってきてあかりのことを見ると一目ぼれする。

手品でバラを出し、渡す。

あかり「わっ、あ、ありがとう」

西園寺「いえいえ。このぐらい大したことじゃないです。」

晃一「す、すげぇ~!かっけぇ!!」

西園寺「ありがとう」

先生「えー、じゃあ西園寺君。自己紹介お願いします。」

西園寺「(黒板に文字を書き)西園寺隆です」

晃一「達筆すぎて読めねぇ」

先生「それじゃあ西園寺君はー、一番後ろの空いている席に座ってください。あ、遠山さんの隣ね」

西園寺「これからよろしく☆」

千紘「!!や、やばい!!惚れました。一生ついていきます。西園寺さん」

先生「えー、ではホームルームを終わりたいと思います。」

裕貴「気をつけ、礼」

みんな「ありがとうございましたー」

あかり「あっ!裕貴君。昨日は傘ありがとう!」

裕貴「ああ!ぜ、全然大丈夫だよ。にわか雨ってこまっちゃうよね」

あかり「ね~。あ、傘のお礼で今度お弁当作ってくるね」

裕貴「えっ、悪いよ!」

あかり「いーの、いーの!おいしいかわかんなけど~」

裕貴「えっ、あ、ありがとう…嬉しい」

あかり「うん!あ、そうだ。西園寺くん…だよね。さっきのってどうやったの?」

芽生「あれすごかったよね」

リサ「もしかしてりゅーりゅーってマジシャン?」

西園寺「りゅっ…っ?!えーっと、そんな大それたものじゃないさ。僕はただ人よりハイスペックな高校生さ。」

千紘「カッケーっス、西園寺さん!!」

晃一「えっ、じゃあさじゃあさ、この問題とか分かっちゃったりする?」

西園寺「えーっとこれは             で、これはーあれ、これちょっとわかんないな」

想 「これは           だよ」

西園寺「…すごいね」

想 「別に、人より少し勉強ができるだけなんで」

西園寺「…」

先生「はい、みんな席ついてー。えー、授業が始まる前に皆さんにお話があります。えー3年生はもうすぐ卒業してしまうということで、みなさんが最上級生となります。つまり皆さんがこの学校を引っ張っていく立場になるわけですのでー…(黒板を裏返す。そこには『生徒会長募集』と書いてある)誰が立候補する人―!!」

みんな「…」

先生「えーっと…長谷川君とか…どう?」

裕貴「ぼくに務まるか不安で…」

先生「さ、西園寺軍は…?」

西園寺「いや、僕転校初日なんですけど」

先生「まあ、じゃあ考えてみてください」

裕貴「気を付けー礼。」

みんな「さようならー」

先生「あ、宇野さん。申し訳ないんだけどこのノート後で職員室に持ってきてくれないかな。」

あかり「えーっと…わかりました。」

あかりがとても多いノートを持とうとする。

裕貴「宇野さん、手伝うよ」

あかり「大丈夫大丈夫」

裕貴「本当に?」

あかりがバランスを崩して倒れそうになる。そこを西園寺が支える。

西園寺「大丈夫じゃないでしょ。ほら」

裕貴「僕、持っていくよ」

西園寺「いや、俺が持っていくよ」

裕貴「僕今日日直だからそのついでで持っていくって」

西園寺「俺、筋肉あるからこんなもん小指で持てるね」

裕貴「いや、僕もバランス力あるからノートぐらい頭に乗せて持っていけるよ」

西園寺「そんなの俺だってできますぅー!」

あかり「じゃあお言葉に甘えて…3人で持っていこうか」

先生「宇野さん。ほんとごめん!それやっぱり持ってこなくていいや!教卓においておいて!」

あかり「あ、わかりました」

先生「いつもありがとうねー。これからも頼りにしてるからね」

あかり「…はい」

裕貴・西園寺「「……」」

芽生「ねー、あかり。帰ろうよ。」

あかり「ごめん、ごめん!じゃあねー、長谷川君と西園寺君!」

裕貴「ばいばい!」

西園寺「また明日!」

芽生「…。」

あかりと芽生はける。

西園寺「同じ苗字呼びだね」

裕貴「西園寺くん?って苦手な事って何かないの?」

西園寺「ハッ、俺が?あるわけないだろ」

裕貴「そっか」

西園寺「成績優秀、運動神経バツグン!そしてさらにこの整いすぎた顔!」

裕貴「うらやましいよ。天に二物も三物も与えられて」

西園寺「まさにそう!と言いたいところだが」

裕貴「?」

西園寺「俺は努力で手に入れたんでな」

裕貴「えっ?」

西園寺はける。

千紘「あ、お供します。西園寺さん」

千紘はける。

想 「裕貴、帰ろう」

裕貴「あ、僕日直だから先帰っててー」

想 「あ、わかった。じゃあまた明日な」

裕貴「うん。・・・あのさ、転校生の名前さ」

想 「…まだあのこと気にしてんのか?」

裕貴「…」

想 「あいつなわけないだろ。苗字だって違うし。そもそも地元にいるわけ…」

裕貴「だよね。ごめん、考えすぎだったかも」

想 「…お前は人一倍正義感強いから辛い気持ちもわかるけどそろそろ前をむかねーと」

裕貴「うん…。また明日」

あかり「あれ?まだ残ってたんだ」

裕貴「あ、え、うわ!宇野さん?!」

あかり「え、なんでそんな驚いてるの?変なことでもしてた?」

裕貴「あ、いや、えーっと、もう誰もいないって思っていたからさ」

あかり「なんかあやしくない?ま、いっか」

裕貴「忘れ物?」

あかり「そそ。原センの宿題忘れちゃってー」

裕貴「あー原セン怖いもんね」

あかり「あ、あったあった。ね、日直の仕事手伝うよ」

裕貴「えっ、いいよ。あと少しだし」

あかり「二人でやったら二倍でしょ?」

裕貴「あ、ありがとう」

あかり「それにしても、あの転校生すごいよね。頭良くてイケメンで…このままだと生徒会長になっちゃうかもね」

裕貴「そう…だね」

あかり「ね、生徒会長やってみたら?」

裕貴「えっ、無理だよ。どうせあのイケメンの転校生がなるに決まってるし」

あかり「…もしかして、気にしてる?」

裕貴「そういうわけじゃないけど…」

裕貴「それじゃあさ…もし僕が生徒会長になれたらさ…つ、つ、つつつ(月に関する雑学)」

あかり「あ、そ、そうなんだ」

裕貴「あ、いやそうじゃなくて。そのーす、す、すきやきに行ったことないんだー」

あかり「そう、なんだ。あ、じゃあさ、今度一緒に行く?」

裕貴「えっいいの?!やった!え、うん!行こ!!」

あかり「じゃ、帰ろっか」

裕貴「ちょっと待って!僕が、僕がもし生徒会長になったら…付き合ってください!!!」

あかり「…うん、いいよ。でもなったら、だよ?生徒会長、頑張ってね!」

裕貴「ちょ、ちょっと待ってよ~」

教卓の裏から千紘が出てくる。

千紘「やばい…やばい情報を聞いちまったッス…。さ、西園寺さ~ん!!」

暗転。

西園寺「んで、昨日の成果は?」

千紘「それが、大変すよ。西園寺さん。なんか生徒会長になったら、あかりさんと付き合えるらしいっすよ!」

西園寺「えっ」

~西園寺の妄想~

西園寺「あかりさん…あなたのために生徒会長になりましたよ」

千紘「(あかりのお面をかぶり)えっ…西園寺君…私のためって?」

西園寺「はい、あなたのためです。」

千紘「嬉しい!そんな西園寺君が好き!」

西園寺「あかりさん!」

千紘「西園寺君!」

二人ハグをしようとするが、西園寺正気に戻る。

西園寺「…って、お前じゃねーかよ!」

千紘「西園寺さんなら実現できますよ!頑張ってください!」

西園寺「お、おう。ありがとな。…ん?ちょっと待て?お前、俺のことどう思ってる?」

千紘「スキっす!めっちゃスキっす!!」

西園寺「…なのに、なんで俺のことそんなに協力してくれるんだ?」

千紘「恋愛感情はないんで大丈夫ッス!」

西園寺「そ、そうか。まあいい。これからもヨロシク頼むぞ」

千紘「一生ついていきます、西園寺さん!」

あかりと芽生でてくる。そのあとに裕貴と想も出てくる。

西園寺盛大に慌てる。

西園寺「(何事もなかったかのように)おはよう」

あかり「うん、おはよう!」

西園寺「(あかりをいすまでエスコートする)」

あかり「あ、ありがとう」

千紘「(無言で西園寺の写真を撮り続ける)」

裕貴「……(わざと大きな声で)おはよう!」

西園寺「…おはよう」

あかり「おはよう!」

芽生「(少し悲しそうな顔をしている)」

クラスメイトや先生がやってくる。

リサ「きをつけー礼―。」

みんな「おはようございます。」

先生「おはようございます。えっと、昨日募集した生徒会長なんですけどー」

裕貴「はい。僕立候補します。」

西園寺「奇遇だね!俺も立候補しようと思っていたんだ」

裕貴「!」

晃一「え、なになに?みんなやるの?じゃあ俺も~」

音楽が流れる。それにあわせて裕貴、西園寺、晃一以外が机といすをはけさせる。

校長がでてきて紙に勝負のお題が書いてある。一枚目の紙には「腹筋」と書いてある。最初は裕貴も西園寺も同じくらいだったが、千紘のありがた迷惑のおかげで西園寺が負ける。晃一はリサに「くだらないことやってないで」と怒られてはける。2枚目には「テスト」と書いてある。西園寺が裕貴に圧勝する。裕貴と西園寺と校長が走りながらはけていく。はけていったあとは反対のほうから出てくる。3人とも疲れ切っている。ギャラリーのみんなが結果を気になって聞く。

校長「50対50でドロー!!」

みんな「え~!!」

「なんだ~」など言いながらはけていく。

西園寺「ここまで俺と張り合えたやつは初めてだ……」

西園寺が裕貴にハンカチを差し出そうとするが、想が押しのけて裕貴にハンカチを渡す。

想 「おつかれ。大丈夫か?そんな無理しなくてもいいのに」

裕貴「いやー、宇野さんの前では負けられないよ。勝てもしなかったけどね。」

想 「えーっと、じゃあ本番の校内演説について話し合おう。あっちで。」

裕貴と想、はける。想ははける前に西園寺をにらみつける。

西園寺「…」

千紘「お疲れッス!西園寺さん。にしてもよかったんすか?あんな敵に塩を送るような真似をしちゃって。」

西園寺「俺はあいつのこと認めたぜ。…それに」

千紘「?」

西園寺「いや、なんでもない。そんなことより、特訓しに行くぞ!」

千紘「は、はいー!!」

西園寺と千紘はける。チャイムの音。放課後。芽生が出てきて花瓶の花を新しくしている。そこに裕貴が入ってくる。

裕貴「あれ、芽生?何してるの?」

芽生「あ、長谷川君」

裕貴「それいつも変えてるの芽生なんだ」

芽生「気付いてくれてたんだ」

裕貴「頻繁に変わっててマメだなーって思ってたんだよね。やっぱそういうとこ芽生らしいや。変わってないね。」

芽生「そういう裕ちゃんも…あっ」

裕貴「久しぶりだね、その呼び方。」

芽生「…」

二人とも笑い合う。

裕貴「小学校のころはいつも一緒にいたよね」

芽生「楽しかったなー、あの時。想と3人で秘密基地作ったりして」

裕貴「あはは、作った作った。次の日は雨でグショグショだったしね」

芽生「そーそー。…中学生になってからあんまりみんなと遊ばなくなったよね。」

裕貴「芽生が僕のこと長谷川君って呼び始めたのも中学生からだったよね」

芽生「だってみんな苗字呼びなんだもん。あの中で裕ちゃんなんて無理無理」

裕貴「あのときはびっくりしたなー。急に話さなくなったと思えば『長谷川君』だもん」

芽生「しょうがないでしょー」

裕貴「ちょっと寂しかったなー、僕(笑う)」

芽生「え?!」

裕貴「え?」

芽生「あ、いや…なんでもない…。そういう裕ちゃんは私のことずっと『芽生』呼びだよね」

裕貴「えーだってそりゃあ芽生は芽生だし」

芽生「…あかりは『宇野さん』なのに?」

裕貴「え、いや、な、なんで今宇野さんの話になるのさー。それに芽生は幼なじみでしょ?」

芽生「!」

裕貴「それとも。そういう風に呼ばれたいの?『宇佐美さん』って」

芽生「あ、あははは!何それ、おっかしー」

裕貴「ほらー」

芽生「…裕ちゃんと想くんは今でも仲良いよね」

裕貴「そりゃあずっと一緒にいるしね。…それに、友達は絶対大事にするって決めているんだ。」

芽生「…神山くんのこと?」

裕貴「(うなずく)」

芽生「…あの件は別に裕ちゃんが悪かった訳じゃ…」

裕貴「想にもいい加減前向けって言われたんだけど、でも…」

裕貴「ごめん、暗い話になっちゃって。話題変えようか。」

芽生「う、うん…。あ、そうだ。もうすぐ生徒会長選だね。」

裕貴「絶対負けるわけにはいかないからね。」

芽生「…あかりのため?」

裕貴「えっ?!あ、知って…るんだ」

芽生「…」

裕貴「あ、じゃあさ、何か協力してくれないか?な、芽生!」

芽生「えっ」

裕貴「そのー宇野さんが喜びそうなこととか……ま、まあまず選挙頑張らなきゃだけどさ。」

芽生「…ごめん、無理。」

裕貴「え、な、なんで」

芽生「好きなの」

裕貴「!」

芽生「ずっと前から裕ちゃんが好きなの。…だから協力できない。」

裕貴「・・・」

芽生「…ごめんね」

裕貴「あ、いや…こっちも知らない間に傷つけていた。ごめん。…それに、気持ちには答えられない。」

気まずい空気が流れる。

裕貴「あ…僕あっち行ってくるわ」

芽生「…」

裕貴「…ありがとう」

芽生「!」

♪ 愛を拾い上げた手のぬくもりが 今もまだ痛むのです

  これさえあればお互い口にして 全て分かりあった

  睡を飛び出し頬を伝う彼ら あごの先で大渋滞

  まあこの先涙を使うことなどもうないし まあいっか

  全部ここで流し切ってしまえ。

ここで芽生が裕貴に抱き着く。そこにあかり・西園寺・想・千紘登場。

♪ まずい まずい まずい 猛烈にまずい

  あなたが買った歯磨き粉も 9割5分残していったり 

  どこに行ったの?ねぇどこに行ったの(あかりはける)

  私を振ってんじゃないよバカ(芽生が手を離す)

  振っていいわけないでしょ(西園寺が裕貴を殴る)

  確かに倦怠期予防のサプライズも(西園寺があかりを追いかける)

  忘れないでとたしかに言ってはいたけれど

  振っていいわけがないでしょ

千紘は西園寺についていく。芽生は裕貴に謝ってはける。

想 「今のって…宇佐美だよね。どういうこと?」

裕貴「あ…」

想 「宇佐美のこと好きなの?宇野さんは?」

裕貴「…ごめん。今は放っておいて欲しい」

裕貴はける。

想 「おい!裕貴!」

想はける。暗転。中割を閉め、その中で演説のシーンに場転。

あかりが立っている。西園寺が出てくる。

西園寺「宇野さん!」

あかり「…。」

西園寺「(ハンカチを渡す)」

あかり「ありがとう」

西園寺「うん」

あかり「私、どうしたらいいのかな。もう、どうすればいいのかわからないや」

西園寺「とりあえず、明日の演説待ってみようよ」

あかり「でも」

西園寺「誰のこと信じればいいのかわからないなら、俺のこと信じて。ね?」

あかり「うん…」

暗転。中割幕の前に裕貴が座っている。想登場。

想 「裕貴、もうすぐ出番だぞ。」

裕貴「(うつむいている)」

想 「紙ちゃんと持ったか?」

裕貴「用意、していないんだ」

想 「へ?!」

裕貴「やっぱり、僕には無理だったんだ。無謀だったんだよ。僕は、僕は誰かを傷つけることしかできない。」

想 「宇野さんはどうなったんだよ!」

裕貴「昨日西園寺くんが追っていったから多分大丈夫だよ。」

想 「そうじゃなくて!お前の気持ちの話をしてんだよ。」

裕貴「昨日の見ただろ?もう無理なんだ。」

想 「昨日のは誤解なんだろ?!ならちゃんと解かなきゃ」

裕貴「これ以上下手に動いて関係を悪くしたくないんだ」

想 「お前、逃げんのか?」

ゆうきはけようとするが、想が腕をつかみ止める。

想 「このままだと中学生のころのお前と同じだぞ。」

裕貴「!」

想 「俺はお前に後悔してほしくない。もう辛い顔は見たくないんだ。」

裕貴「想…」

想 「大丈夫。裕貴、お前は人一倍優しくて、正義感が強いやつだ。そんな奴が傷つける事しかできないなんて、あるわけないから。」

想が裕貴の背中を押す。

想 「ほら、みんな待ってんだ。もちろん宇野さんも。だから行ってこい!」

裕貴「…うん!」

想 「応援してるからさ」

裕貴はける。

想 「なんであいつ、自分が両想いってことに気付いてないんだろ。(笑う)……さようなら、俺の…初恋」

芽生「気持ち悪っ」

想 「うおおおいびっくりした!お前なんでここにいんだよ」

芽生「遅いから連れてきてって言われたの。」

想 「てかきもち悪ってどういうことだよ!」

芽生「前から思ってたんだけど、ほんと気持ち悪いよねー」

想 「お前失礼だぞ。」

芽生「鶴崎だから言ってんの」

想 「普通にひどいな」

芽生「フラれちゃった?」

想 「ああ、お前と同じだな」

芽生「殴るよ?」

想 「同盟でも作る?」

芽生「馬鹿な事言ってないで早くしないと演説始まっちゃうよ」

想 「そうだな」

芽生「へこんでないの?」

想 「別に。もともと宇佐美と付き合うと思ってたし」

芽生「今それ言う?」

想 「まあ、宇佐美はいい奴だから、いざとなったら俺がもらってあげるよ。なーんて」

芽生「…なに言ってんの」

想 「冗談冗談」

芽生「あのさ、一回。一回だけ私のこと名前で呼んでみてくれない?」

想 「え、なんで?まあいいけど。」

芽生「いいから!」

想 「…芽生。」

芽生「…」

想 「おい、何だよ!」

芽生「…ないわー。やっぱり絶対ないわー。」

想 「おい。何なんだよ。お~い、芽生?」

芽生「一回でいいって言ったじゃん。」

想 「え、今なんか言った?」

芽生「ばーか!」

芽生はける。

想 「え、おい、置いていくなよ!」

想はけると同時に中割が開く。壇上にはマイクを持った裕貴。みんなが話を聞いている。少したったら想も出てくる。

裕貴「今回、生徒会長に立候補させていただいた長谷川裕貴です。突然ですが皆さん、後悔をしたことはありますか?僕はたくさんあります。その中でもずっと心に残っている大きな公開が一つあります。僕が中学生の頃、同級生がいじめられていました。僕はその子の親友でした。だけど、僕はその子に何もしてあげられませんでした。周りに流されてしまいました。僕は傍観者という立場でそのいじめに加担してしまっていたんです。その後、その子の家に電話をかけてもつながりませんでした。次の日学校からその子が引っ越したと聞きました、僕は…僕を恨みました。嫌いになりました。あの時、その子のそばにいられなかったことを、とても悔やみました。僕は、そんな自分を変えるために今ここに立っています。みんなに支えてもらいながら。僕はみんなに後悔して欲しくないです、そのことを伝えたくて生徒会長演説を使い、話させていただきました。…この学校は素晴らしい学校だと思っています。なので、学校をどうしたいかではなく、僕の気持ちを伝えました。演説っぽくなくてすみません」

芽生「…裕ちゃん!頑張れ!!」

裕貴「!」

想 「裕貴、頑張れ!」

裕貴「…もう一つ、僕には伝えなきゃいけないことがある!僕が、後悔しないために」

みんな「なーにー?」

裕貴「宇野あかりさん!!あなたが好きです。もし、僕にまだ挽回の余地があるのなら、このあと僕のところに来てください!」

生徒たちそれぞれ「わー」「いいぞー」「よくやったー!」など盛り上がっている。

裕貴「これで、僕の演説を終わりにします」

みんながはやしたててあかりのほうを見る。あかりは恥ずかしくて逃げる。暗転。

西園寺「あかりさん」

あかり「あ、西園寺君」

西園寺「なんか、昨日と似ているね」

あかり「私、逃げてばっかだね」

西園寺「俺も、追ってばっか」

二人で笑う。

西園寺「よかった。あかりさんが笑顔で」

あかり「え?」

西園寺「昨日見たのは泣き顔だったから」

あかり「…」

西園寺「長谷川のとこ、行かないの?」

あかり「昨日の今日でまだ気持ちがぐちゃぐちゃで」

西園寺「そっか」

あかり「芽生のこともよくわかってないし…」

西園寺「おれ、昨日裕貴のこと殴っちゃった」

あかり「え?!本当?」

西園寺「なんかついカッとなって」

あかり「なんでよ(笑う)」

西園寺「でもあいつは絶対人を傷つけることはしないし」

あかり「まだ出会ったばっかなのに?」

西園寺「…長谷川の演説聞いてたでしょ?」

あかり「ああ、後悔の話?」

西園寺「『その子』って俺なんだ」

あかり「え?!」

西園寺「裕貴には内緒だよ」

あかり「長谷川君に伝えなくていいの?」

西園寺「俺のこと気付かなかったお返し。まあだから、あいつはいい奴だよ。」

あかり「うん…。そうなんだけど」

西園寺「あかりさん」

あかり「何?」

西園寺「俺、あかりさんのこと好きだ」

あかり「!」

西園寺「でもあかりさんのことを泣かせるのも、笑わせられるのも、俺じゃダメなんでしょう?」

あかり「ごめん」

西園寺「俺はあかりさんに謝らせるために言ったわけじゃないから」

あかり「ありがとう」

西園寺「後悔しちゃダメでしょ。ほら」

あかり「私、行ってくる」

西園寺「頑張れ!」

あかりはける。

西園寺「はぁ。かっこつけすぎだろ、俺。」

千紘「かっこよすぎッスよ、西園寺さん…(泣きながら)」

西園寺「好きな女の前では最後までかっこつけたくもなるものなんだよ。悲しい男の性さ」

千紘「かっこよすぎましたよ、西園寺さん」

西園寺「あの二人なら心から幸せを願えるからさ。」

千紘「一生、一生ついていきます西園寺さん」

西園寺「おう、ありがとうな、千紘」

千紘「はい!…え、今、な、名前で呼びました?!」

西園寺「ほら帰るぞ」

千紘「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ、西園寺さ~ん!」

西園寺と千紘はける。

裕貴が出てくる。あかりを待っている。あかりが走って出てくる。

裕貴「あ、宇野さん」

あかり「長谷川君」

裕貴「僕、」

あかり「大丈夫、私は君のこと信じてるから」

裕貴「僕、頑張るから。生徒会長頑張るから」

放送「えーただいま、選挙の集計結果が出ましたので、全校放送で発表したいと思います。えー、今年度新生徒会長は、安田晃一くん、新生徒会長は安田晃一くんです。」

上手からリサと晃一が出てくる。下手から放送部員が出てくる。

放送部員「あ、安田さん!新生徒会長の安田さんですよね!今の気持ちを一言!」

晃一「あー、いや、正直自分でもなんでか分かんなくて、まあなんか気付いたら?気付いたらなってた的な?結局こうなることが必然だった的な?まあなんかそんな感じです、はい。」

放送部員「なるにして成ったと。」

晃一「……?」

リサ「ハイって言っておけ」

晃一「ハァイ」

放送部員「おお、さすがです。ちなみにこの女性は?」

リサ「平成最後のカリスマギャルリサリサで~す。まぢうちの彼ピッピが生徒カイチョーになってバイブス上がってっから」

放送部員「お、おぉ~。ちなみにバイブスとは?」

リサ「え、そんなことも知らんの?つまりテンションって意味」

放送部員「なるほど」

晃一「ハッハッハ!これからは俺の時代の幕開けじゃ~」

晃一とリサと放送部員はける。裕貴とあかりは呆然と見ている。

あかり「(笑いだす)」

晃一「う、宇野さん?」

あかり「だって、あんなにかっこつけていたのに、結局、ふふ、なれないって…アハハ」

裕貴「僕、もう合わす顔ないや(笑う)」

あかり「あの、みんなの前での告白、恥ずかしかったんだからね……嬉しかったけどさ。」

裕貴「えっ」

あかり「あの約束、生徒会長になれたら、だったよね?」

裕貴「あ、そう、だね」

あかり「じゃあ、約束なかったことになっちゃうね」

裕貴「…そうだね」

あかり「それじゃあ、長谷川君。私から一つ言いたい事あるんだけど。」

裕貴「?」

あかり「私、長谷川君が好き。付き合ってください!」

幕。